私はこの展覧会に自身初めて写真を作品として出品する。
正直私は写真に興味が無かった。もちろん記録として写真の機能を使うことはよくあった、しかし自分の芸術作品として写真を発表する事が理解できなかった。
CGを除けば現実にそこにあるモノしか写すことが出来ないし、何よりボタンを押せば完成してしまうなんて多少のノウハウがあるにしてもなんて幅の狭い世界だろうと感じていた。
それに比べて絵はそこにあるモノを正確に描写することが可能なばかりか現実を超える事も容易であり、さらには次元さえ超える事ができる、無限に思えるほど幅広い世界だ。
まさにその人にしか創れない作品。替えが効かない、無二の存在となり得る。
絵画は芸術において写真の遥か上位に位置すると考えていた。
しかし偶然地元のギャラリー(artmania cafe gallery yokohama)でmasashi_furukaによるデジタル一眼レフのワークショップの開催を知った。
私は自分の絵画作品を出来るだけ鮮明に写真にしたいと考えていたのだが、家にあった使われていない古い一眼の使い方が良く分からないでいたので値段も安いし丁度いいと軽い気持ちのこのワークショップを受けた。
そこで如何に自分が馬鹿であるかを知った。
このワークショップはたった1日2時間を2回と大変短い期間で内容も写真を学んでいる方にとっては序の口であったのだが、それだけでも私の想像を遥かに超えるものであった。
写真1枚撮るにも大変な幅の広さがあった。
これをきっかけに写真を作品として発表している写真家たちの作品をよく観るようになった。
驚いた。 あ、誰々の作品だと写真を観て分かるのだ。 絵と同じ様に。
確かに名を上げている写真家たちの作品にはハッキリと撮り手の人間が写っているのだ。
そしてそこには絵とは異なる美しさがあった。
すごいと感じた。
どちらが上とか下ではないのだ。求められていることが違う、共通する部分も多くあるが確かに別のジャンルであることを今更気づかされた。
ここまで来ると居ても立ってもいられなくなった。そこに絶妙なタイミングで八王子夢美エンナーレの賞金が入り、これは運命だと信じて、いろいろ調べ妥協なしのカメラを買った。
そしてこの展覧会に参加することが決まり、写真作品を出品する事を決意した。
もともとエロティックやグロテスクに惹かれる部分は私の中に確かに存在し、それを作品に投影したいと考えていて、幸い協力的なモデルとも出会うことが出来たのでスムーズに事が進んだ。
そして実際にモデルを前にしての撮影。
作品のモチーフが私と同じ人間で、違う人生を送り、私とは異なる事を考え、今まさにカメラの前で息をしている。
これまで作品の画面上に在るものはすべて自分の中にあるものであった私にとって非常に新鮮で、これまでにはない責任感とプレッシャーを感じた。
私の作品となるためにそこにいてくれているのだ。まさに感無量であった。
今回のテーマはストーリー的背景やモデルのキャラクターは一切除き、何より「生き物」であることと、「私が解釈するエロ」、「少女」、この3つを存分に引き出す、というものだ。
そして頭で思い描いていたイメージを現実に再現するする事には成功した。
しかしなかなかこの感動や空気、緊張感が写らない。 もう少しなのだ、もう少しなのに届かない、己の力不足と写真の難しさを身に沁みて思い知った。
しかし非常に楽しかった。この撮影が自分にとって大きな前進であったとハッキリと分かる。
今、この時撮った写真をデジタル処理によって作品にする作業に没頭している。
どうか期待してほしい。
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